ドラムの防音室を作る際のポイント
投稿日:2021.03.22
生ドラムは特に大きな音が出る打楽器です。普通に叩くと100デシベル程度の音が出ますので、家に何も防音対策を行わない状態で叩けば、多くの場合、騒音の苦情が来てしまうでしょう。
自宅に持ちこんで練習したい方も多いのではないでしょうか。ドラムを家の中に設置するにあたって必要なのが、防音室です。ここでは、ドラムに関する基礎的な知識から、どのような防音室をつくればいいのかを解説いたします。
ドラムの特徴
ドラムはいくつもの打楽器が組み合わさってできています。そのため、一つのドラムセットから多種多様の音が発生し、その音質はさまざまです。
ドラムセット上部に設置されているシンバルからは非常に高い音が出て、逆に最も低い音は、バスドラムというペダルを踏むことで叩く大きな太鼓からでます。このバスドラムとシンバルの音をイメージするとわかるように、高低差が激しい音を発することができると言えます。
ドラムの音圧は楽器の中で一番大きく、振動を伴う低音域の音が作られやすい楽器です。低音は高音に比べて音が広がりやすいので響きやすく、バスドラム等の振動が床をはじめ、部屋全体を震わせるので、非常に大きい騒音になるのです。
防音室の基本
ドラムの防音室の基本は、外部に音の振動を伝えない事です。外との間にできるだけ音や振動を吸収する物質を挟むことによって、その効果が得られます。
浮壁、浮床、浮天井の構造や防振ゴムなどの防振材、制振材を使って、部屋から音の振動が伝わることを防止し、遮音ボードをはじめとする遮音材、グラスウールなどの吸音材、で部屋の6面を補強することで音漏れを防ぎます。このような施工によって内部からの音漏れを防ぐことができると同時に、外部からの騒音もなくし、音楽に集中できる環境を作りましょう。
部屋の中の音の反響についても考えます。
遮音性「D値」で測定
防音室を設計する上で参考になる数値が、「D値」と言う遮音性能を表す数字です。音が発生した時の大きさと聞こえた時の大きさの差から算出され、例えば80デシベルの音が発生したのですが、耳に聞こえたときは30デシベルで聞こえたとすれば、その差の50デシベルが「D値」となります。
ドラム室を作る際には、D値が65~70程度になるように設計すると、理想的な遮音が可能です。一般的にドラムを叩けば100デシベル程度の音が出ますので、100デシベルから65~70デシベルを引くと30~35デシベル。この数値を目標に遮音性を高めれば、ドラムを家で叩いても外部に影響が少ない作りになるのです。
防音室はどの家でも設置することができる?
ドラムを演奏するための防音室工事は、かなり大がかりになります。壁や床をはがして、ドラムの防音に適した防音材をはさみこむほか、天井や窓、ドアにも相応の工事が必要となるからです。そのため、部屋のサイズが一回りか二回りは狭くなってしまいます。
そう考えると、持ち家の一戸建てであれば、ほぼ問題なく設置できますが、マンションでは難しいと言えそうです。少なくとも、賃貸マンションの場合は防音室工事はできません。分譲マンションの場合は、マンションの建築形態によっては可能なケースもあるかもしれませんが、壁、床、天井に工事が入るということは、隣や上下の住居にも影響が及ぶということです。現実的には「できない」と考えたほうがよいでしょう。
防音室を設置すれば、音漏れはかなり解消されるのですが、「完璧に防音できるか」というと、残念ながらそうとは言い切れません。そこで併用したいのが防音グッズです。必要な箇所に合わせて防音グッズを使い、防音効果を高めましょう。
床に設置する防音グッズ
振動が伝わりやすい床には、ドラム専用のマットを敷きましょう。先ほどもお伝えしたように、ドラムからは高低さまざまな種類の音が出ます。通常の防音マットは、ある種の音にしか対応しませんが、ドラム専用マットはドラムから出る音に対応して作られたもの。できれば部屋全体に敷くのがベストですが、費用もかかるため、ドラムを置くスペースだけでもかまいません。
ドラムはペダルも多用する楽器でもあります。ペダリングの衝撃をやわらげるグッズもあるので、併用するとより効果的です。
窓に設置する防音グッズ
ドラム用の防音室の窓は、3重あるいは無窓です。とはいえ、窓はどうしても隙間が生じやすく、音が漏れやすい場所でもあります。さらなる防音対策をしておきましょう。
使うのは、吸音用の素材です。グラスウール、ロックウールのほか、スポンジ状のものもあります。この吸音材を窓と窓の間にある空気層に詰め込み、できるだけ隙間をなくしましょう。
見映えが気になるようであれば、カーテンを取りつけるとおしゃれです。防音効果のあるカーテンもあります。
ドラム自体に装着する防音グッズ
バスドラム、スネア、ハイハットなど、種類ごとに音をミュートするセットが売られているので、これを購入して対処することができます。打つ面にパッドを取り付けるだけなので、手間もかかりません。
ただし残念ながら、ドラム本来の響きを得ることはできなくなってしまいます。とはいえ、騒音を出さないことも、生活するうえでは大切なことです。使うタイミングや場面を自分なりに考えながら、ドラム本体からも音を出さない工夫をしていきましょう。
防音工事を行うことで、家庭で日常的にドラムを叩くことは可能です。しかし、ドラムの騒音特性上、防音の知識の無い個人、リフォーム業者では防音工事の限界があります。近隣トラブルにならないためにも、ドラム室の施工実績のある防音専門会社に施工を依頼すべきです。
関連記事はこちら
ボイスチャットを楽しみたい人のための防音対策
投稿日:2021.11.25
ステイホーム時間やリモートワークの増加によって、コンピューターのネットワーク上での音声通話、いわゆる「ボイスチャット」を利用する人が増えています。せっかくならば...
どれがいい?家庭用スピーカーの選び方
投稿日:2021.11.24
自宅で音楽や映画を鑑賞する際は、なるべくオーディオ機器にもこだわって良い音質で聴きたいものですね。スピーカーからの臨場感ある音は、ヘッドホンではなかなか得られま...
インコの鳴き声が響く!効果的な防音対策とは
投稿日:2021.11.23
インコは見た目や鳴き声が可愛らしく、小さなスペースでも飼育できるため、根強い人気のあるペットです。しかし、飼い主にとっては癒しの鳴き声も、他人にとっては耳障りな...
マンションで飼っている猫の鳴き声や足音の防音対策
投稿日:2021.11.22
マンションなどの集合住宅でも、ペット可物件を探せばペットを飼うことができます。特に室内で飼いやすい猫は、ステイホームの影響もあり、とても人気があります。しかし一...
ペット可の賃貸物件で起こりやすいトラブルとその対策
投稿日:2021.10.28
日常のストレスや疲れを癒してくれる可愛い動物たち。ステイホーム時間の増加などの影響もあって、ペットを飼う人は増えており、ペット飼育可の物件であれば賃貸でも動物と...
防音工事をDIYで行う場合の方法
投稿日:2021.10.27
ステイホーム時間やリモートワークが増えた影響もあって、自宅に防音効果のある静かな書斎や趣味を楽しむ部屋を作りたい、というニーズが増えているようです。しかし本格的...
入居者から騒音の苦情を受けた場合の対処法
投稿日:2021.10.26
さまざまなライフスタイルの人たちが生活するマンションやアパートなどの賃貸物件におけるトラブルで多いのが、騒音によるものとされています。ひとたび入居者から騒音の苦...
賃貸物件で騒音トラブルを起こす入居者を退去させることは可能?
投稿日:2021.10.25
賃貸物件のトラブルの中でも特に多いのが、騒音によるものだといわれています。他の入居者から騒音の苦情が寄せられたら貸主や管理会社はその対処にあたり、場合によっては...
Web会議に適した防音環境の作り方
投稿日:2021.10.07
人々の移動時間を減らし、経費の削減とビジネスの効率化アップに大きく寄与するWeb会議は、テレワークの普及もあり近年急速に浸透しています。しかし一方で、Web会議...
Web会議で雑音がひどいときの原因と対処法
投稿日:2021.10.06
遠隔のオンラインで行う会議といえば、一昔前ならば高額で大掛かりな設備投資が必要なテレビ会議システムでしたが、現在はパソコンやスマートフォンを使ってごく簡単にWe...
会議室を防音室にするメリット
投稿日:2021.10.05
会議室やミーティングスペースはたいていどんな会社でも備えられているものですが、「会議室」と名前がついているだけで、他のスペースと設備が特に変わらないことも少なく...
ライブハウスに必要な防音対策
投稿日:2021.10.04
多くの有名ミュージシャンも、最初は小さなライブハウスから演奏活動を始めています。ライブハウスは、そんな演者と、支持する観客が一体となれる夢の空間ともいえる場所で...
アパートの空室対策のためにオーナーが行うべきこと
投稿日:2021.03.22
所持しているアパートの空室になかなか借り手がつかない、あるいは、年を追うごとに空室が増えているといった状況があるなら、オーナーとして、今すぐにでも空室対策を行う...
不動産の資産価値を向上させるためにできること
投稿日:2021.03.22
家、マンション、アパートなどの不動産は、建ててから年を経るごとに傷みや不具合が生じ、劣化していきます。貸し出している不動産に空室を作らない、あるいは所有している...
オフィスの防音が必要な理由とすべき箇所
投稿日:2021.03.22
ビルの一室を借り、室内をレイアウトしてデスクや事務機器などをセッティングすればオフィスは完成――のように思えますが、実は忘れずに対処しておきたいことがあります。...
ピアノ教室を開校する際に行うべき防音対策
投稿日:2021.03.22
自分の特技を生かしてピアノ教室を開こうというときに、いくつか準備しておきたいことがあります。そのひとつが、防音対策です。教室の運営を始めると、連日、長時間に渡っ...
木造住宅を防音リフォームする際のポイント
投稿日:2021.03.22
木造住宅は、その構造上、室内の音が外に漏れやすく、外の騒音も入ってきやすいという性質があります。そのため、ピアノやギターを練習するときはご近所に気を遣い、大きな...
一戸建てとマンションでのピアノの防音対策の違い
投稿日:2021.03.22
マンションと一戸建て、どちらでもピアノの防音対策ができるのか心配な方はいらっしゃるのではないでしょうか。結論を申し上げますと、マンション、一戸建てどちらの住宅に...
何が違う? 防音材の種類と吸音と遮音の違い
投稿日:2021.03.22
住宅の防音において強い味方となる「防音材」と呼ばれる素材。これがあるとないでは音の伝わり方が大きく変わります。今回はそんな防音材に関してご紹介します。素材自体の...
自宅で運動をする際におさえておきたい防音対策
投稿日:2021.03.22
新型コロナウイルスの流行で「ステイホーム」が呼びかけられていることもあり、自宅にいる時間が長くなりつつあります。それに伴い、屋外やスポーツジムでしていた運動を自...
どこを重視すればいい? 防音工事施工会社の選び方のポイント
投稿日:2021.02.01
楽器演奏、録音や録画、あるいはテレワークのよりよい環境を作るために、自宅の防音工事を検討する人が増えているようです。確かに防音室があれば音に関する悩みは軽減され...
ゲーム実況をする際におこなうべき防音対策
投稿日:2021.02.01
ゲームプレイの様子を実況するゲーム実況動画が、人気を集めています。すでに動画をアップして活動しているという人もいれば、これから挑戦してみたいという人もいるのでは...
ギター演奏者必見! ギターを演奏する際に行うべき防音対策
投稿日:2021.02.01
ギター演奏上達のためには、練習が欠かせません。しかし、防音対策をせずに自宅で練習をすると、音が響き、隣近所に迷惑がかかってしまいます。あまりにも音が大きいと、苦...
新築に防音室を導入するときのポイント
投稿日:2021.02.01
ピアノやギター、ドラムなどの楽器を周囲に気兼ねせずに演奏したり録音したりしたい、カラオケや映画鑑賞を自宅で思う存分楽しみたい、そんな願いをかなえてくれるのが防音...
どれくらい防げる? 防音カーテンの効果
投稿日:2021.02.01
子どもがはしゃぐ声やペットの鳴き声、楽器やテレビの音などは、自分が思う以上に外に漏れていることがあります。「実は、近所の迷惑になっていないか気になっていた」とい...
防音リフォームにはどんな方法がある? それぞれの効果と相場
投稿日:2021.01.08
周囲に気兼ねすることなく楽器演奏や音楽鑑賞を楽しみたい、隣近所からの生活音にイライラする、子どもの走り回る音が階下に響かないようにしたいなど、音に関する悩みを解...
テレワーク中の騒音で仕事にならない! 効果的な対策とは?
投稿日:2021.01.08
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために多くの企業がテレワークを導入、自宅が仕事場になったという人も多いのではないでしょうか。ただ、出勤の必要がなくラクにな...
音が漏れやすい箇所! ドアにおこなうべき防音対策
投稿日:2021.01.08
室内で音楽を聴いたり楽器を演奏したりするときに気をつけたいのが、音漏れです。「ドアをきっちり閉めておけば、音は漏れないのでは?」と思われるかもしれませんが、実は...
宅録する際に必要になる防音対策とその方法
投稿日:2021.01.08
自宅で歌や演奏を録音する宅録。わざわざスタジオを予約する必要もなくお手軽ですし、動画サイトに映像をアップして人気を集める人も登場しています。とはいえ、音を出す作...
雑音・騒音をシャットアウトしたい! おすすめの防音対策
投稿日:2021.01.08
生活の中には、さまざまな雑音や騒音がひそんでいます。車やトラックの走行音、楽器を練習する音のほか、アパートやマンションのような集合住宅では、隣室や上下の部屋から...
ペット(犬)のための防音対策について
投稿日:2015.02.25
ペットを飼っている多くの方が経験しているであろう、ペットの騒音問題。ペットを飼う前に考えるべき問題ではありますが、人の個性のように、ペットにも個性があるため、飼...
生活騒音の発生源について
投稿日:2015.02.25
皆さんの生活で起こり得る「生活騒音」。政府機関によるアンケートでは、多くのマンション居住者は、この生活騒音について悩みを抱えているようです。さらに、被害者になる...
ピアノの防音室を作るメリット
投稿日:2015.02.25
騒音トラブルの原因で多い「ピアノ」。電子ピアノであればイヤホンで聞くことができますが、弦を使ったピアノは持ち運ぶこともできず、音の調整もしにくい楽器です。しかし...
マンションの防音工事のポイント
投稿日:2015.01.25
マンショントラブルとしてよく挙げられるのが騒音によるトラブルです。新しいマンションであれば、防音を考えて作られていることが多いですが、古いマンションに住んでいる...
レコーディングスタジオは音響に気を使おう
投稿日:2015.01.25
「音」はとても繊細で、環境によって伝わり方や聞こえ方が大きく変わってしまいます。そんな「音」を記録するレコーディングスタジオは、設計から周辺機器の環境まで入念で...
防音設計にする際、意識すべきポイント
投稿日:2014.12.25
さまざまな場所で騒音に関するトラブルが増えている昨今、防音設計にする住宅が非常に増えています。自分自身の健康被害を予防するだけでなく、不要な近隣トラブルを避け、...